企業では、さまざまな場面で契約書を活用します。必要なときにすぐ閲覧・使用できるようにするには、適切な管理体制を構築し、維持することが大切です。
この記事では、契約書管理の基本として、適切な状態を整備・維持するための一般的な方法を詳しく解説します。
契約書管理とは
契約書管理とは、企業同士の取引や労働者雇用に関わる契約書やその関連書類を管理する体制のことです。様々な業務に関わる重要な業務でもあります。
これらの書類の中には、契約締結後保管・保存すべき期間が法律で定められているものもあります。これらの書類を法律や契約に沿って、有効期限・取引内容ごとに把握・共有・活用・管理するのが主な業務内容です。
契約書管理の適切な状態
契約書管理は、ただ社内で書類をまとめておけばよいものではありません。適切な管理が必要です。契約書やその関連書類は、業務で活用・共有することもあります。管理が適切に行われていないと、業務をスムーズに進められなくなります。
体制が整っていない状態で書類を管理していると、書類の紛失など契約上のトラブルにつながりかねません。
業務の滞りや契約上のトラブルを避けるには、以下の体制を整えておく必要があります。
- 契約締結日・満了日・取引内容などが安全に管理されている
- 必要なときはいつでも該当する書類を検索できる
- 社内外の人間による紛失・破損・改ざん・流出ができない場所・状態で適切に管理している
- 管理している書類をいつ・誰が・閲覧・持ち出ししたかが分かるよう記録されている
- 閲覧可能・閲覧制限のあるものが適切に分けられている
- 契約書の内容や保管場所・ルールが共有されている
契約書管理は、ただ体制を整えるだけでなく、適切に管理できている状態を維持することも大切です。
契約書管理のポイント
では、契約書管理が適切な状態を作り、維持するにはどうすればよいのでしょうか。書類を適切かつ使いやすい状態にするためには、以下4つのポイントを意識する必要があります。
- 一元管理
- 項目管理
- 起源管理
- 内容管理
一元管理
一元管理とは、締結した契約書や関連書類を管理部門に集約して扱う方法です。書類がバラバラに管理されていると、必要な書類を集めるために複数の部署を渡り歩くような状態になります。業務のたびに書類を集めている状態では、業務効率化はできません。
全ての書類を集約して管理すれば、必要なときに部署に行くか検索にかけるだけで内容を確認・共有できます。書類へのアクセス権を適切に設定管理できるので、閲覧や持ち出し記録の管理もスムーズです。一元管理は契約書をはじめとした書類管理の基本といえます。
項目管理
契約書は一元管理だけすればよい、というものでもありません。書類が必要なときにすぐ検索・閲覧できるようにしておくことも大切です。そのためには、管理内容を項目ごとにまとめてある管理台帳を作成し、それに沿った分類整理をしておく必要があります。
管理すべき項目は自社の事業ごとに細かい部分が異なりますが、一般的には以下のような項目で分類します。
1. 契約書に関する情報
- 当事者名(契約相手)
- 取引金額
- 契約締結日
- 契約期間
- 支払いの周期
- 自動更新の有無
2. 管理情報
- 所管部署
- 担当者
- 稟議番号
これらの項目をまとめて適切に管理すれば、個々の契約に関する注意を一覧的に把握することも可能です。自社が締結している契約の傾向も一目でわかるため、業務の分析もできます。
期限管理
契約書には期限が決められており、業務中にそのステータスをいつでも確認できるようにしておく必要があります。期限管理は契約のステータスを確認しやすい環境を整えるのが目的です。
契約の中には更新拒絶の申し入れがない限り、契約が同じ条件で自動更新される条項が含まれている契約があります。これらの契約を放置すると、不要な契約に契約料や更新料を支払い続ける状態をつくり出してしまいます。不要な契約の更新拒絶を適切なタイミングで行うためにも、期限管理は重要です。
内容管理
内容管理とは、自社基準から外れる特別な内容の契約を、個別に把握・管理する業務です。
基本的に企業の契約は、決められたひな形や業務の流れに沿って仕事をします。しかし、まれに自社オペレーションとは異なる契約を結ぶこともあるでしょう。イレギュラーな契約の内容を管理することも、必要な業務です。
内容管理は、ただイレギュラーな契約を扱うだけではありません。該当する契約上のやり取りを行う際、契約違反の有無などを定期的に監査する作業も行います。業務を適切に進めるために、欠かせない業務であるといえます。
契約書管理体制の整備手順
契約書の管理体制を築くうえで重要な要素をおさえたら、実際に整理する手順も覚えておきましょう。適切な体制整備はバラバラに動くとうまくいきません。
一般的には、以下の流れに沿って作業を進めます。
契約書の管理体制を作成する
契約書や関連書類を一元化するには、まず部署と責任者を決めなくてはなりません。部署と責任者を決め、必要な権限を与えるところから取りかかりましょう。書類を扱う部署の枠組みを決めたら、必要な業務を洗い出します。
- 書類管理の目的
- トラブル対応の手順
- 管理する書類の種類
業務の洗い出しが終わったら、内容をまとめて次の作業に移ります。
管理する契約書の原本収集
管理体制を整備したら、社内にある契約書と対象書類を集めます。集める書類は本店・本社だけでなく支店や支社のものも集めてください。
契約書を送ってもらう場合は、配達記録が残る方法を用いましょう。書類が届く予定の日時を過ぎても、配達記録があるならある程度追跡できます。また、紛失時の対応も記録があった方がやりやすいです。書類を集める際は、万が一の事態も想定しながら行います。なお、支社・支店がない場合は、配達の手配は必要ありません。
管理台帳の作成と契約書の棚卸し
契約書を集めたら、管理するための契約台帳を作成します。業務上必要な項目に沿ってそれぞれの内容を台帳に記入してまとめましょう。ビジネス用のソフトやアプリの中には、台帳管理に活用できるものもあります。このようなソフトやアプリの導入もおすすめです。
なお、台帳の項目やまとめ方は、自社業務をよく考慮してまとめましょう。だれが閲覧・検索しても使いやすい内容を意識してください。台帳を作成したら、契約書を整理します。
管理台帳の内容に従って、契約書をファイリング・収納します。契約書の入ったファイルや、ファイルを入れるキャビネットには、契約書の名前やナンバーを付けてください。一目でなんの書類が入っているのかわかるようにしましょう。
契約書管理手順の周知
契約書の整理が終わったら締結後の保管・保存・廃棄までの流れを、業務に関わる従業員全員に周知します。きれいに整理しても契約書を使う人がルールを守らなければ、意味がありません。適切な状態を維持するためにも、徹底して伝えましょう。
あわせて、定期的に手順が守られているかチェックできる仕組みを入れておくと、契約書を扱ううえで発生するトラブルを予防できます。
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まとめ
契約書は業務を行ううえで重要な書類のひとつです。
スムーズに業務を進め、契約上のトラブルを予防するためにも、適切な管理体制を整える必要があります。管理におけるポイントと手順をきちんと守って、使いやすい体制を維持しましょう。